[コラム] 思い出の残し方 ー心理学から考える思い出写真ー
2016.03.17
『満開の桜をバックに宙を舞う笑顔の赤ちゃん』
これは私が赤ちゃんだった頃の写真です。
満開の桜をバックにエクストリームな高い高いで私を宙に放り投げる父(落とされなくて良かった 笑)。
当時はフィルムカメラでしたから、奇跡的なタイミングでシャッターを切った母(すごすぎます)。
一枚の写真から、なんとなくですが、当時の二人の気持ちを推し量ることができます。
私のお気に入りの写真です。
プリントが1枚残っているだけでしたが、スキャンして結婚式の生い立ちビデオにも使いました。
1枚の写真。
何気なく見たらただの写真ですが、その裏には様々なエピソードが隠されているはずです。
心理学で考える、なんていうと難しい感じがしますが、今回はこの「エピソード」に注目したいと思います。
エピソード記憶。
心理学では人の「記憶」を「短期記憶」と「長期記憶」に分けて考えます。
「短期記憶」は昨日の晩ご飯、明日の予定など、一時的な記憶。
「長期記憶」は住所、氏名など定着した記憶や、〇〇したこと、などのいわゆる思い出の記憶です。
この、思い出の記憶を心理学では「エピソード記憶」と呼んでいます。
「子供の頃〇〇デパートでアンパンマンの人形を買ってもらった」
というような、エピソードとしての記憶は残りやすく、思い出すときも一連のエピソードとして蘇る、というものです。
存在すら忘れていた物、例えば引き出しにしまい込んだ髪留めやネクタイピン、一枚の写真。
親しい友人にもらった髪留め。
就職した記念に買ったネクタイピン。
仲間と撮った卒業式の写真。
それらを手にした時に、一瞬で懐かしい記憶、エピソードが蘇る。
誰しも経験あることだと思います。
pindot studioでは、『お気に入りのおもちゃやぬいぐるみ、初めての靴や普段着ている服を是非お持ちください』とお勧めしています。
写真館で素敵な写真を残す。
それはとても深い意味のあることだと思います。
「わざわざ写真を撮りに行ったんだ!」なんて言いながら、大人になった時にその写真を眺め、
当時の両親の心境を推し量ったりするでしょう、私のように。
その写真にもエピソードがたくさん詰まっています。
「あの日あなたは機嫌が悪くて撮影が大変だったのよ!」とか
「いつもは人見知りなのにカメラばかり見てニコニコしてモデルみたいだったわ!」とか。
そんな風に、人生の折々で見返して、話をしてもらえる写真を残したい。
撮影をするとき、いつもそんなことを考えています。
ただ飾った写真を撮るのではなく、エピソードを少しでも多く織り込んだ写真にしたい。
だから、普段着ている服や、お気に入りのおもちゃや、初めての靴。
そういった、思い出のアイテムを是非お持ちいただきたいと考えています。
きっと
「この靴、初めての靴をあなたに手渡したら、かぶりついてみんなで大笑いしたわ」とか
「この絵本、これを見せたらいつまでも飽きることなく見ていたんだよ」とか
たくさんのエピソードを思い返し、当時(つまり今)の気持ちが蘇ることでしょう。
スタジオにお持ちいただいた、初めての靴やお気に入りのおもちゃなどを撮影した写真を最後にいくつか掲載します。
一見ただのブツ撮りの写真にも見えますが、そこにどんなエピソードがあるのか?
想像してみるとほんの少しワクワクしてきませんか?
ずっととっておけないものも、すぐに大きくなってしまう者も。
是非写真にして、思い出のエピソードと一緒に残していただきたいと思います。
最後までご覧頂きありがとうございました。
今度は「デジタル時代の写真の残し方(仮)」というテーマで書いてみたいと思います。
Photographer 浜田泰介